限定10食!サラダラーメン
会社の近所にHという中華屋がある。夫婦2人で切り盛りしていて、昼時以外に客足はなく、その昼時でも近隣のラーメン屋Mが休みの日にはなんとか席が埋まる程度。それでも夜遅くまで営業している、「愛の貧乏脱出大作戦」的な雰囲気漂う店である。
その店に最近「サラダラーメン」なる新メニューが登場した。表の電光看板によると限定10食らしい。値段は900円。それは登場以来、いつも一緒に昼食に出るメンバーの間で話題になっていた。サラダラーメン?なぜに限定10食?そして900円という値段設定は高すぎないか?…と。メンバーの誰もが、約1年前の開店当初に行ったきり足を踏み入れていなかったので、どんなものなのか知る由もなかったのだ。
そこである日、私が勇気を出して「じゃあ、今度の土曜日に試してみる」と宣言した。
昼12時半すぎ入店。客ゼロ…。期待通りだ。
サラダラーメンはスペシャル限定メニューなので、メニューには載っていない。カウンター席の前や壁に、赤と黒のサインペンで書いた、お世辞にも上手とは言えないPOPが貼ってある。
曰く、「酢っぱ!辛い!サラダラーメン 温 サラダたっぷり 10食限定」(温はギザギザの丸で囲んである)。いかにもそのPOPに惹かれた雰囲気で、「サラダラーメンってどんなのですか?」と、おばちゃんに聞いてみる。ドラえもんのような声のおばちゃんは、「生野菜なんですけどお…。温かい麺で。酸っぱくて辛い…。」書いてあるとおりの説明で、追加情報はなし。これも期待通り。「じゃあ、それ」と注文する。何が「じゃあ」だかわからないが。
しばし待ってサラダラーメンが登場した。たしかに醤油ラーメンの上に中華ドレッシングで和えたサラダ(チャーシュー入り)が載っている。だから酸っぱくて辛い。それだけ。それがラーメンのスープと融和して、ぼやんとした味になっている。これで900円。醤油ラーメンが600円なので、その差300円がサラダ代である。
なにぶん載っていたのがサラダなので、食った気がしない。しかし、一見ならぬ一食の価値のあるものであったと思う。食べないまま閉店でもしようものなら激しく後悔しただろう。だから食べてよかった。もう一度は食べないが。
さて会計にあたり、私は少しの不安を感じていた。もし、「お味はどうでしたか?」とでも聞かれたらどうするか。「別に…」と答えるわけにもいかず、「さっぱりしていて美味しかったです」とでも言うことになるだろう。しかし、それは罪悪になりかねない。
というのも、Hは日々の営業で収益が上がっているとは思えず、少なからず「持ち出し」になっていると思われる。私のような客が「おいしかったです」といい加減な評価をすることが店存続のきっかけとなり、さらに持ち出し額を増大させてしまう可能性があるからである。
しかし、それは杞憂であった。レジへ向かうと「900円ですう」。1000円札を渡して釣りをもらうと、「ありがとうございましたあ」。終了。スペシャル限定メニューに興味を持った客に対する食後の感想リサーチはなかった。
「これでこそ」と安心した。
その店に最近「サラダラーメン」なる新メニューが登場した。表の電光看板によると限定10食らしい。値段は900円。それは登場以来、いつも一緒に昼食に出るメンバーの間で話題になっていた。サラダラーメン?なぜに限定10食?そして900円という値段設定は高すぎないか?…と。メンバーの誰もが、約1年前の開店当初に行ったきり足を踏み入れていなかったので、どんなものなのか知る由もなかったのだ。
そこである日、私が勇気を出して「じゃあ、今度の土曜日に試してみる」と宣言した。
昼12時半すぎ入店。客ゼロ…。期待通りだ。
サラダラーメンはスペシャル限定メニューなので、メニューには載っていない。カウンター席の前や壁に、赤と黒のサインペンで書いた、お世辞にも上手とは言えないPOPが貼ってある。
曰く、「酢っぱ!辛い!サラダラーメン 温 サラダたっぷり 10食限定」(温はギザギザの丸で囲んである)。いかにもそのPOPに惹かれた雰囲気で、「サラダラーメンってどんなのですか?」と、おばちゃんに聞いてみる。ドラえもんのような声のおばちゃんは、「生野菜なんですけどお…。温かい麺で。酸っぱくて辛い…。」書いてあるとおりの説明で、追加情報はなし。これも期待通り。「じゃあ、それ」と注文する。何が「じゃあ」だかわからないが。
しばし待ってサラダラーメンが登場した。たしかに醤油ラーメンの上に中華ドレッシングで和えたサラダ(チャーシュー入り)が載っている。だから酸っぱくて辛い。それだけ。それがラーメンのスープと融和して、ぼやんとした味になっている。これで900円。醤油ラーメンが600円なので、その差300円がサラダ代である。
なにぶん載っていたのがサラダなので、食った気がしない。しかし、一見ならぬ一食の価値のあるものであったと思う。食べないまま閉店でもしようものなら激しく後悔しただろう。だから食べてよかった。もう一度は食べないが。
さて会計にあたり、私は少しの不安を感じていた。もし、「お味はどうでしたか?」とでも聞かれたらどうするか。「別に…」と答えるわけにもいかず、「さっぱりしていて美味しかったです」とでも言うことになるだろう。しかし、それは罪悪になりかねない。
というのも、Hは日々の営業で収益が上がっているとは思えず、少なからず「持ち出し」になっていると思われる。私のような客が「おいしかったです」といい加減な評価をすることが店存続のきっかけとなり、さらに持ち出し額を増大させてしまう可能性があるからである。
しかし、それは杞憂であった。レジへ向かうと「900円ですう」。1000円札を渡して釣りをもらうと、「ありがとうございましたあ」。終了。スペシャル限定メニューに興味を持った客に対する食後の感想リサーチはなかった。
「これでこそ」と安心した。

