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2023-06

言葉って面白い

日本語と韓国語は非常によく似ています。

文法構造はほとんど同じですし、語彙も特に漢字語を中心に同じものが多いので、日本人と韓国人とでは、互いの言語を比較的容易に習得できます。

私はもともと、韓国語の翻訳業務のみをやっていましたが、日本語とは構造や考え方が全く異なる中国語の翻訳を始めて、その難易度の高さにぶつかったとき、「これまで、楽な仕事でお金もらっててすみませんでした」という気持ちになりました。

昨年10月まで北京で中国語を学んでいましたが、日本人と韓国人のクラスメイトの間では、それぞれ互いの言語の方が、中国語よりも習得が早かったほどです。

どのぐらい似ているかというと、

約束 - 약속(ヤクソク)
調味料 - 조미료(チョミリョ)
高速道路 - 고속도로(コソクトロ)

とか。ほかにも様々ありますが、たぶん、韓国語を知らない人が聞き流していても、「今、高速道路って言った?」って聞き取れるぐらいです。音だけでなく、たいがいの漢字語は、意味も一緒です。

日本と朝鮮半島は、中国から漢字の読みと意味が伝来した時期が近く、さらに、日韓間で直接伝わったものも多いため、このように似たものが多いのです。

一方、本家中国では、その後長い時間を経て、意味も読みも変化しました。例えば「約束」の場合、日韓間では読みも意味も同じですが、現代中国語では「ユエシュー」と読み、「束縛する、制限する」という意味で使われます。

つまり、現代中国語へと変化してくる間のある時期における古い形が、日本語と韓国語に残っている訳です。この現象は中国の方言にも存在し、古い形を残す福建語や広東語などでも日本語や韓国語と近い発音があったりします。

そういうような訳で、漢字語については、日韓間で似たものがあるのは容易に理解できます。

ところが、漢字語ではない固有語(日本語の場合、「和語」と言ったりしますが)にも、不思議なことに、互いに音は違うものの、意味範囲が似てるものが多いのです。例えば、

かける - 걸다(コルダ)  物を(壁とかに)掛ける、鍵をかける、命を懸ける、会議にかける、エンジンをかける、望みをかける、電話をかける
きく - 듣다(トゥッタ)   音を聞く、薬が効く
め - 눈(ヌン)  (身体の)目、(網やかごの)目、草木の芽

などなど。英語を思い浮かべてみると、上の「かける」で挙げた動詞が全て同じであるはずがありません。hang、lock、start、callなど、場面によってさまざまな訳が考えられます。

ところが、韓国語では多くの場合、「かける」は「걸다(コルダ)」でいいんです。「きく」にしても、「音を聞く」と「薬が効く」、動作としてどこにも共通点はないはずなのですが、韓国語でもこの2つの動作は、「듣다(トゥッタ)」という同じ動詞を使うのです。それから、

~てみる - ~보다(ポダ)
試しにちょっとやってみるという時に使う「~てみる」と「(目で)見る」には、動作として共通点はありません。韓国語で「~てみる」というのは「~보다(ポダ)」と言いますが、この「보다(ポダ)」を単独で使うと、「見る」という意味になります。


古代のラテン語から派生してイタリア語やスペイン語ができたように、どちらかが先にあって、それがもう一方に伝わったというのであれば、意味範囲だけではなく、発音の上でも共通点があるはずです。しかし、「きく」と「듣다(トゥッタ)」には発音上の共通点がありません。

意味だけが似通っていて音が全然違うということは、どちらかが起源ということは言えません。でも、このような意味範囲の類似性ということを考えてみると、おそらく、日本語と韓国語という2つの言語が発生した非常に古い時代、この2つの民族は、何か身の回りの事象に対する、非常に似通った感覚を持っていたということなのだろうと思います。

これほど似ているのに、日本語と韓国語は系統的に謎の言語と言われ、いまだに、どこから来たのか、その親戚関係が解明されていません。でも、なんとなく、これからも解明されないような気がするし、不思議なままでいいような気もします。

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韓国語と中国語の翻訳をやってます。

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